世界トップレベルのサッカー指導者になる2つの選択肢とは?

フィジカルだけでは生き残れない クリスティアーノ・ロナウドが今でも点を取れる理由

5試合で10得点をあげたクリスティアーノ・ロナウド

レアル・マドリードがCLの優勝を飾って2016−17のヨーロッパのサッカーシーズンは幕を閉じました。

決勝は、スペインリーグで優勝を決めて勢いに乗るレアル・マドリードと、バルサを倒したユベントスという両チームともが勝利の可能性のファクターを十分に持っていた2チームでしたがレアル・マドリードが4−1で勝利を納めた結果となりました。

これでレアル・マドリーはリーガと合わせて2冠を達成。

加えて、史上初のチャンピオンズリーグの2連覇という偉業を達成したのです。

個人タイトルでは、クリスティアーノ・ロナウドが12得点でCL得点王

なんとなんと、5年連続でCLの得点王ということですからこれも注目すべき偉業です。

今回はそのCLで準決勝からの5試合で10得点という驚異のペースで得点をあげ続けたクリスティアーノ・ロナウド選手のパフォーマンスを分析してみたいと思います。

以下が準々決勝以降のCR7のゴールのデータです。

4月13日 vsバイエルン・ミュンヘン 2ゴール

4月19日 vsバイエルン・ミュンヘン 3ゴール

5月3日   vsアトレティコ・マドリー 3ゴール

5月3日   vsアトレティコ・マドリー ノーゴール

6月4日   vsユベントス       2ゴール

5試合で10ゴール。そのうち2回がハットトリックです。

力が拮抗しているCLのようなコンペティションですから、通常は得点のチャンスは少ないはずなのにハットトリックを2度も達成しているというところは衝撃的なデータと言えます。

本当の凄さは点を取る場所を知っている「嗅覚」

さて、このデータでは得点の「量」的な観点になりますが、ここからは「質」的な視点でみていきたいと思います。

こちらの動画はCL16-17の彼の全得点です。

直接FKを一本決めていて、残りは全てがレマテ(1タッチ、または2タッチで合わせる形のシュート)による形でゴールを決めています。

彼のプレースタイルのイメージは圧倒的なフィジカルベースによるスピードや、高い地点で合わせることのできるジャンプ力でのヘディングゴールを彷彿とさせますが、実は違うようです。

もりろん他の選手よりも優れたフィジカルコンディションを保有し、ハイパフォーマンスを助けていることは間違いありません。

事実、若いころの得点の形を分析するとパワーやスピードの優位性で1vs1を突破してシュート、相手の上をいくジャンプでヘッドという形で得点をあげているというシーンもあります。

しかしながら、年齢と共にフィジカル能力は衰退してきますからそれに依存してプレーすることはできなくなります。

ではなぜクリスティアーノ・ロナウドは30歳を超えた今でもCLという世界最高レベルの難易度のコンペティションで点を取りつづけることができるのでしょうか?

次の動画は2006から2017のCLでのゴール集ですが、彼のゴールの形を分析するとわかりますが「1タッチで合わせる」形がほとんどです。

ですから、クリスティアーノ・ロナウドが点を取り続けられる本当の理由は、どこにポジションを取ったら点を取れるのかを知っているという卓越した戦術能力であることがわかります。

決して、身体能力任せでジャンジャカと点を量産している訳ではないんですね。

カウンターの際にはクロスボールに対してファーサイドに詰める、深い位置からのセンタリングにはDFラインの一歩手前のスペースでボールを受ける、というような相手が嫌がるポイントに必ず居るから点が取れるということを知った上でプレーしていることが動画から伝わってきます。

事実、先日のユベントス戦の1点目はカルバハルにボールを預けてからレマテに行っていますがゴール前のスペースが埋まっていると見るやPKスポット付近に留まるという判断を的確にしています。

かたや、2点目はモドリッチのクロスボールに対してニアのスペースが空いていること、それから自分がキエッリーニに一度ポジショニングを確認されているということを認知した瞬間にポジションをスッと変えてレマテをする地点を決めました。

ですから、クリスティアーノ・ロナウドはめまぐるしく変わる状況、ピッチ上に転がっている情報を読み取りそれに対して見事に自分のプレーを合わせる能力で点を量産しているということになります。

フィジカルコンディションは条件でしかない

5月30日に発売された弊社代表の坪井が翻訳を務めた『バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』内でもこのテーマに通じるところの記載があります。

”ガルシア・マンソ(1998)らは効率の概念を組み込み、「可能な限り少ない時間で、効率的アクションを最大限起こすことを可能にする能力」としている。この概念は、サッカーのようなスポーツの基本だ。なぜなら試合中におけるアクションの成否は「可能な限り少ない時間の中で実行されるアクションかどうか」ではない。「スペース的に正しいアクション」である。それは予測能力、目に見えるシチュエーションだけでなく、「プレーの展開から先に何が起きるかを見極める能力」である。” 

”複雑な環境に対する選手の行動の原動力の適応は、実行するプレー・環境と選手自身の複雑な相互作用のプロセスに成果として生まれる”

(『バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』スピードの章より)

このことから、クリスティアーノ・ロナウドが30歳を超えてフィジカルが衰えた現在でもなぜ点が取れるのか?という問いには、彼はフィジカルコンディションが落ちてきても、その低下したフィジカル条件とCL決勝という環境の相互作用プロセスから成果を生み出す能力が高いからであると答えることができるでしょう。

相互作用のプロセスから成果を生み出す能力があれば歳をとってもトップレベルでもプレーできる。これはベテラン選手が長くプレーできることを科学的に説明している表現でもあります。

ですから、フィジカルが落ちたからダメという訳ではなく、フィジカルの低下は選手のプレーを条件つける要素の一つでしかなく、サッカーはそれ以外の要素が複雑に絡んでいるのでその他の要素との調整をうまくこなせば効果的にプレーすることは可能なのです。

確かに近年では身体能力ベースによる派手なゴールは減りましたが、知的なアクションによって大きな舞台で大事なゴールを決めることができるのはスペース的に正しい効率的なアクションを発揮できるいるからであり、だからこそ今でも活躍できているのですね。

彼のパフォーマンスからは得点力不足が叫ばれている日本サッカーのFWの育成にも参考になることあるはずです。

大事なのは身体能力だけにプレーを任せずに、しっかりとマークを外してフリーになる戦術能力を身につけられるような指導をしていくことです。

指導者としては今後もクリスティアーノ・ロナウドの点を取る場面から、ストライカーための参考になる要素を勉強できることは間違いありません。

その

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