指導者として能力を向上させるためには何が必要なのでしょうか?
それは正しい理論と豊かな実践経験です。
この2つが車輪の両輪の様にバランスよく積み重なることで、監督としての能力向上、選手の成長も促すことができる指導者への道を進むことができます。プレサッカーチームの留学プログラム中にはスペインのコーチングスクールへ通い、座学とピッチでの指導実践をバランスよく経験します。
それも年間でトータル700時間を超える量になりますので日本ではなかなかできないものと言えます。日本においてこの量と質があるサッカー指導者育成の環境は聞いたことがありません。
スペインのコーチングスクールの時間割をここで挙げると、平日6時間を座学と指導実践に充てられ、週に5日間みっちりとそれをこなします。理論だけでも机上の空論になってしまいますし、ただ現場経験を積むだけでは現象の原因の理解と適切な解決策の提示は難しくなってしまうのでバランスが大事なのです。
理論とは?
プレサッカーチームのプログラムではスペインに来て、戦術、テクニック、フィジカル、心理学、チームマネジメント、スポーツ医学などといった監督として必要な知識を整理された教材をベースに学びます。ドリブルやパスといったテクニックアクションの定義や試合のどこで使われるかの研究結果をもとに指導にどう落とし込むのか?というような理論を学びます。
ヨーロッパでは当たり前の認識とされている「プレイモデル」の概念、「プレッシング」や「サイドチェンジ」というような攻守にわたる20項目近くの戦術コンセプトを基礎から徹底的に学習します。現場で起こっていることを論理的に理解し、原因の究明、そして現象の再現性を高めることになるといえます。
コーチングスクールに通う前の期間に受講する日本語での「スペインサッカー理論」授業。ここでは講師からのインプットに加えて、生徒が自ら考えたトレーニングメニューの説明をするようなアウトプットの機会を大切にしている。なぜなら、コーチングスクールでは受け身ではなくディスカッションに参加することが求められるからだ。
スペイン人講師を招いての特別授業も行われる。2017年はUEコルネジャユースB監督のゴンサロ・アルミージャ氏を招いてチームマネジメントの授業が行われた
実践とは?
ピッチ上での指導実践、日々の指導現場(試合、トレーニング)にあたります。まさに理論がカオスの様に目まぐるしくダイナミックに機能している現場です。
スペインサッカー理論の授業ではピッチ上での指導実践も実施された。座学で学んだことをピッチ上に持ち込みどのような現象が起きるかを検証する場となる
講義にて頭に理論を叩き込んでもピッチでそれを見出し指導することは簡単ではありませんし、予想していなかった問題が発生して対応できないこともよくあります。
しかし、これは経験により解決されるので多くの経験を積めば大丈夫です。
毎日の実践で、「何が起きたのか?何がうまくいき、何が失敗し次回はこのように対応しよう」と反省する作業を繰り返すことで指導者のメモリーとしての経験値が上がり、トレーニング中の対応も余裕を持ってできるようになります。
はじめにも述べましたが、この2つは車の両輪のようなもので互いに相互作用が働いているのでどちらかだけでは欠けています。掛け算的に作用し、理論を持って実践に臨む、実践の経験を通して理論を理解することで効率的な学習となるのです。
その様な意味でも、スペインのサッカー環境は指導者にとって理論と実践の質とバランスは非常に良い環境だといえ、サッカー指導者として成長するためには適した場所といえるでしょう。
「実践なき理論は空虚である。理論なき実践は無謀である。」
(ピーター・ドラッカー)