PSTアカデミー4期生の青島さんのインタビューをお届けします。
青島さんは静岡県出身。日本で先生をしながら高校サッカーの指導者をしていたところから、2015年1月からPSTアカデミー生としてバルセロナにやってきました。現在はコーチングスクールに通いながら、複数のクラブ、チームで指導に関わっています。
今回は1年と少しが経過した留学生活の様子は2度にわたってお伝えします。
ライセンスレベル1は無事に合格
コーチングスクールはかなり慣れてきましたか?
青島:そうですね、レベル1が終了してテストも全て合格したのでひと段落したところです。
じゃあ今は冬休みですね。コーチングスクールでのスペイン語はどうですか?始めは話すスピードが早いと感じていたと思います。語学学校と違いますが、それに関しては慣れてきたところですか?
青島:慣れたとは思います。語学学校との違いはサッカーの環境に入っているかどうかの違いがあります。
では逆に言うとサッカーの環境に入ってしまえばスペイン語には慣れてくるということでしょうか?
青島:はい、現場に入ってしまえば慣れると思います。僕の場合は4月にクラブに入っていたのでそこでスペイン人の監督や選手と話すと言うことはやっていたので、コーチングスクールが始まった時に辛いと思ったことはありませんでした。なので、大事なのはスペイン人と関わっているかどうかだと思います。
(すでにスペイン人のチームにて監督として指導をしている青島さん。もちろん話す言葉はスペイン語)
では一つのポイントはなるべく早く現場に立つと言うことですね。
青島:現場で、と言うのは一番理想だと思います。やはりサッカーで来ていますからね。インテルカンビオ(異なる言語であってお互いに教え合う方法)でもいいんですが、サッカーと通して現場に立つと言うのは、今も5期生の方がすでにやっていますが、あの様な形はとても良いことだと思いますし、プレサッカーチームの良いところで縦のつながりがあるメリットなのかなとも思います。
青島さんはスペインに来てからどの様な流れでチームに入ったのですか?スペインに来てからサッカーとの関わりはどうだったのか教えてください。
青島:平日はトレーニングを見に行っていました。どう言うメニューなのかなぁって感じです。結局は想像しかできないんですよね。で、試合を見ていても日本で自分が勉強してきたこと、何となくゲーム分析ってこういう風にやるのかなとかを本を読んでいて思っていたことをその様な視点でしか見ていなかったから、今思えばおそらく一つ一つの「点」でしか見ていなかった様な気がします。4つのモーメントの中でどの様になっているかと言う観点では見ていなかったでしょうし、プレサッカーチームの授業を受けていてやっていた様に「今日はサリーダデバロンだけ見よう」という日を作ったりもしていなかったので、その様な部分ではだいぶ変わったのかなとは思いますね。
点で見ていたとしても日本とスペインでそれなりの違いを何か感じたりはしませんでしたか?
青島:視点が漠然としていたのだと思います。プレーのインテンシティが高いなと思ってはいても、なぜインテンシティが高いのだろうかを深く掘り下げて考えていなかったな、というのはあります。選択肢を絞っているからそこでインテンシティを上げてボールを奪いにいけているんだとか、そういうところまでは見えてなかったです。
ということは最近はそれが徐々に見える様になってきたのですね。
青島:サッカーの樹形図を作った時に、「この局面でこういうプレーをしたい」とか、「何でここでインテンシティが上がったんだろう?」「ああこういう風にプレーしている、もしくはボールの誘導が連続しているってことはこれが狙いなんだろうな」ということが、樹形図を自分なりに作ったところから見える様になりました。試合というのは監督が持っている樹形図やプレーモデルが現れている場所ですから、監督がどういうことを考えているんだろうと思う様になりました。
そういうアイデアは、私は日本にいる時は持っていなかったですね。見る時にどういうサッカーをしたいという視点では見ていなかったです。
青島:起こる現象でしか見ていなかったですからその背景をつかもうとしていなかったです。
その様な見方に違い、特に背景をつかもうとしていないにしても日本とスペインでは目に見えるアクションが違うことがありますよね。例えばコントロール一つ見ても違うと思うのですが、その様な違いから何か気づきなどはありましたか?
青島:漠然としていましたね。「あ、うまいな」と。なぜそれがうまいのか、センターバックのコントロールオリエンタードがなぜ敢えて大きなコントロールをしているのかというのは、例えば大きなコントロールを一つすることによって味方がデスマルケするタイミングのスイッチを入れているというのもありますよね。そういう背景までは見えていませんでした。「ああ、こうやってコントロールで相手を超えて行くんだな」とか「インサイドでコントロールしているな」で終わり、という様な感じで、その程度でした(笑)
確かにそうですよね。私も来たばかりの時は、コントロールの時によく顔が上がっているな、くらいしか思っていませんでした(笑)そう考えるとちょっとだけスペインに来て生のスペインサッカーを見たとしても背景がわからないと場合、学びもそこまで深くはならないですね。やはりコーチングスクールに行くことや、プレサッカーチームの授業で全体のプレーモデルを理解する必要がある。
青島:そうですね、その方がいいと思います。勿体無いというのは後からしか感じないのかもしれないですけど、あの時に今考えている様なことを考えられていたらもうちょっと変わっているのかもしれないですけど。でも過ぎてしまったことなので仕方がないとは思いますが。
もしかしたら知識があったら最初の一年はもっと充実していたかもしれませんね。でも日本ではそういう勉強というのはできないものなのでしょうか?色々とメディアには情報が出ていますが、やっぱり違いますか?
青島:何か勉強していたつもりというのと、「それもう解ってるよ」と思っていました。「それ当たり前じゃん」思っていたのだけれど、当たり前だけどそれを深く考えないとサッカーが見えてこないですよね。そこで当たり前だと思ってしまうとシャットアウトしてしまうので入ってこないと思うんです。そういう意味で今はインターネットで記事などを見たりすると以前とは違う感覚がありますね。一度、自分の中で落とし込もうとする感覚があるので当たり前だと思った時に敢えて自分に落とし込もうと思っています。
面白いですね。それは何か価値観が変わった瞬間というのがあったのですか?
青島:そうですね。やっぱり後藤さんと黒沼さん(両者ともにレアッシ福岡FC所属、昨年PSTのスペインサッカー理論の授業の講師を担当)の存在は大きかったです。この人たちとても深く考えているなと。一緒に話していて、裏付けをちゃんと出来る人たちなんです。それでこの人たちを超えていくためには「このままではいけないな」と思いました。「なぜこの様なトレーニングをしたのですか?」と聞いた時に、パッパッパッと答えが返ってくるところとかですね。差をすごく感じさせられた感がありました。言っていることは目新しいことではなさそうなんですが、背景がありそうな印象でしょうか。
では、先輩との違いを実感して自分ももっとやらないといけないと思ったんですね。日本にいる時はそういう環境はあったのでしょうか?
青島:やはり日本だと表現や言葉が曖昧だったりとか、とても一般的だったと思います。「だって普通はこうだよね」という様な暗黙の了解が多かった様に思います。黒沼さんはそういうのを言葉を噛み砕いて一つ一つ選手に伝えていた印象です。スペイン語で指導している時は言葉はシンプルでしたね。
ではスペインと日本を比較すると一つはサッカー言語が一つ一つわかり易いということがありますね。
青島:そうですね。言葉の多さが違うというのはあると思います。サポート一つを取っても7種類あるじゃないですか。おそらく日本語だとそれらが「サポート」という一つの言葉にまとめられてしまうのでしょうね。
スペインの理論は細かいですね
青島:逆に「細か過ぎない⁈」って思う時ありますよね。選手にちゃんと伝わってるのかなって思う時あります。どうなんですかね?
やはり大事なのはそれをどう自分の中に落とし込むのかっていうのが大事でしょう。
青島:自分がこの情報を使って、この言葉で選手に伝えるっていう・・・
そうですね。そのようなことが大事ですし、いいものがあったとしてそれを全部自分にコピーして選手に流したとしても、それは自分の中に残らないというかスルーしておしまいになってしまっているだけですし、もしかしたらとある選手には7種類のサポートの数ではない方が良いかもしれませんし。そこの調節をすることが指導者として大事な部分であると思いますし、そこにその人らしさが現れるのだと思います。もしかしたら8個かもしれないし。研究をして細かさを追求するという経験がこちらへきてためになることの一つです。
青島:情報のインプットはできますから、あとはアウトプットをどうするのかということと、アウトプットする前に自分の中でどれだけ取捨選択して整理していけるのかということです。そのためにコーチングスクールで学んだことを振り返り、訳しているという感じです。
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後編へ続く