世界トップレベルのサッカー指導者になる2つの選択肢とは?

【松村利子】最終回:日本にいる時より自分が日本人だと感じる

PSTアカデミー4期生のインタビュー連載。

最終回はスペインへきてアカデミーのプログラムの1年半が終了した今を振り返ってもらいました。海外へきて、以前よりも自分が日本人であることを感じるという松村さん。スペインへきて成長したところなどを語っていただきました。

スペインへきてからの成長

スペインに来てから、指導者として、人として成長しているなと感じているところを教えてもらえますか?

松村:指導者としては、練習のメニューを作れるようになったことです。日本にいた時は何の練習をどのように伝えるのかがわからなかったですけど、スペインに来てからの経験を経て、大きく成長しました。

コーチングスクールに通いだしてから、サッカーを理論的に学ぶことの重要性を感じますか?

松村:とても大事です。どこにフォーカスをして練習するかを多く学びます。日本でもそれは当たり前ですが、スペインでは細かく勉強します。授業では誰かが練習を考えて、それを他の生徒と一緒に掘り下げる作業もします。

また実際にその練習をグランドで実習したりもします。あとはバルセロナにある多くのクラブの練習も見に行ったりもします。指導者学校に通っていたため、他のクラブの練習を見に行っても、どの練習がどのように機能しているかがわかるようになってきました。

スペインに来た理由として、あまりサッカーを理解していなかったと聞きましたが、その悩みは解消されましたか?

松村:少しは変わったなと思います。まだまだな部分はありますが、これから更に成長できたら嬉しいです。

試合の見方にも変化は?

松村:試合はまだちょっと難しいですね…

でも、日本にいた時と比べて変わったではないでしょうか

松村:日本にいたときと比べたら成長はしましたが、もっと細かい視点で見れるようになりたいです。自分の課題は、来シーズンから第1監督になるのでもっと試合を見て選手の動かし方などを学びたいですね。

スペインに来て、他に変わったなという部分はありますか?例えば、毎週試合があって、サッカーの環境が変わったなんてことはありますか?

松村:スペインでは毎週試合があって、それに向けた練習の目的があります。シーズンを通して、チームを短い視点で見たり、長い視点で見たりすることが大事です。例えば、練習の強度を曜日によって変えたり、試合によって調整したりする考えは非常に参考になりました。

すごくびっくりしたのは、日本では常に最大限の強度で練習していたのが、フィジカルの教科の勉強をした際に、曜日によって変えないといけなかったりします。さらにそれにはしっかり理論立てて説明がされていたので、とても勉強になりました。

そういうところはスペインに来て大きく吸収できたところですね。

松村:そうですね。小学生年代でも、そのフィジカルの理論が導入されており、女子チームの監督も取り入れていました。例えば、金曜日の練習では選手にスピード系のトレーニングを混ぜていたのを見たときに、育成年代でもしっかり導入されていたのにはびっくりしました。

では、人間的に経験値を求めてスペインに来ていると思いますが、その部分で変わったことはありますか?

松村:その点に関して思うのは、毎日のように私は日本人なんだなと考えてしまいます。日本に住んでいたときは周りの人が日本人だけだったので、特別なことは考えていませんでしたが、スペインに住んでいて語学学校に通っていると、日本のことについて多く聞かれます。そのためか、常に日本人であることを意識するようになりました。

それはいい意味ですか?(笑)

松村:そうですね(笑)スペイン人にはなれないと思いました(笑)15歳や16歳でスペインに来ていたらどうなっていたかわかりません。

日本とはこういう国っていうか、日本人はこういう人間だっていう感覚が出来上がっていたのかもしれませんね。

松村:そうですね…日本のいいところと悪いところも見えてきましたし、日本とスペインのギャップにも気づきました。ヨーロッパは陸続きで、こっちのスタンダードも学びましたし、世界はこういう風に見ているんだと言った視点も勉強になりました。

その気づけたことは3年、5年後に活かせるかもしれません。

松村:こっちの人付き合いも学びました…スペイン人は家族を本当に大事にしますし、日本はそこまでかなと…人との距離感をとても大切にしますね。

意外とそこが重要だったりしますよね。

松村:例えば、挨拶の時のベソス(口づけ)の文化もそうですね。向こうは私のことをアジア人であることはわかるので、私に気を使っていることも感じます。

そういうのにもなれるのにまだ時間がかかるかもしれませんね。私は自分のペースで接するようにしています。その分、この国に住んでいると少しわがままになってしまうのかなとも感じていますが。

松村:自分から主張することが大事なんですね。

主張しないと、生き残っていけないのかな…居ないのと同じになってしまうと思いますよ。そこから人として変わり、そして日本に帰った時に周りの人に与える影響が良くなってくるかもしれません。

松村:やっぱり、日本の外に出てみないとわからないことがたくさんありますね。

海外が優れているのはなく、知ることが大事

では、今の日本の子供達は若い時から国外に出た方がいいと思いますか?

松村:やはり思いますね。海外が優れているのではなく、知ることが大事なのではないでしょうか。また、スペインでは特に海外に行くことが普通ですよね。人の行き来が多いですし、多くの観光客がやってきます。語学学校に行っていたときも、普通に3ヶ国語や4ヶ国語を話せる人も普通にいました。日本では、英語を話せたたらすごいという感覚です。でもそれが海外では普通ですよね。

海外では3カ国語以上を話すのは普通

外で起こっていることって意外と僕らは知らないですよね。

松村:日本にいたら、日本で解決できてしまうことが多いので、知らなくてもいいといった感覚があると思います。しかし、海外に来てみると外の世界はこんなにも広いのかってなりますし、違いも知れますよね。

そこは私も同じことを感じます。スペインに来て、日本にいたら見えなかったものが見えてきたことがあります。もちろん良い部分もありますが、このままじゃ日本はいけないなって思うことがあります。それはサッカーも含めてですね。

松村:サッカーは特に指導者の育成に特化していかないといけないなと思います。Jリーグができてからの成長はすごかったですが、最近は頭打ちをしているのかなと…もう1つステージを上げるためにも、大きく変えていかないと厳しいのかなと思います。海外、特にヨーロッパがサッカーの流行を発信している時代が続いていますが、日本はそれを真似するのではなく、自ら流行を生み出し発信することが大事なのではないでしょうか。そうしないと、世界のトップには追いつけないと思います。

松村さんは、そういったことにアプローチしようと考えていますか?

松村:日本の上に立ってやろうとは考えていませんが、自分が見る選手に関してはしっかりアプローチしようと思います。例えば、私は1年半で日本に帰ろうと思っていたのが、後1年2年伸ばそうと決断したように、将来的にどうなのかなって考えているところです。

模索中な感じですね。

松村:そうですね…女子サッカーに突き進むとしたら、高校の先生をしながらサッカーの指導に携わることも1つの選択肢ですね。

最近、日本の女子サッカー選手もバルセロナに来ている傾向にありませんか?ですから、松村さんには日本に戻られても日本とバルセロナの架け橋になるようなこともいいですね。

松村:自分がやったこと、サポートできることに貢献したいなと思います。他の人には経験できないことをしていると思うので。

では、日本に帰るタイミングは決めていますか?

松村:自分の中では、後2年はスペインで挑戦してみたいなと思います。

2017−18シーズンの松村さんのチーム状況について教えてください。

松村:来シーズンはFontsanta(フォンサンタ)のインファンティルの第1監督をします。選手の質を考えると厳しいシーズンが予想されますが、成長できるチャンスかなと思います。

是非頑張って、良いシーズンが送れるようにしてください。今日はありがとうございました。

ーーーーーーーーーーーーーーー

これまでの松村利子さんインタビュー

第1回:戦術をもっと伸ばせた高校時代

第2回:海外の「実体験」を伝えられる教員になりたかった

第3回:スペインの女子サッカーはまだまだ強くなる

第4回:20歳でマネジメントが上手な女子監督と過ごしたシーズン

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です